こうのす広場編集部 TOPICS
大蛇の目に見立てた的を弓矢で射って五穀豊穣を願う伝統行事「的祭」
鴻巣市・滝馬室氷川神社(たきまむろひかわじんじゃ)の「的祭(まといさい)」は、地元の人たちからは通称「まとうさい」と呼び親しまれ、大蛇の目に見立てた的を弓矢で射って五穀豊穣や招福息災を願う伝統行事です。平安時代、坂上田村麻呂がこの地で大蛇退治をしたという言い伝えにちなんで、江戸時代頃より当神社の祭礼として伝わり、昭和45(1970)年に鴻巣市指定無形民俗文化財に指定されました。
的祭は毎年1月12日に行われます。神事は、氏神様に祝詞を奏上したあと、地元の十二歳になる子供たちが、大蛇の目に見立てた的をめがけて矢を射って五穀豊穣を祈願します。的に矢が多く当たるとその年は豊作になるといわれています。
的祭を執り行う滝馬室氷川神社は鴻巣市の西南に位置します。JR鴻巣駅西口から徒歩20分と、駅からは少し距離があり、ふだんは住宅地にひっそりと佇む神社ですが、年越しの夜中から元日にかけては地元の参拝客が訪れ、にぎわいを見せます。境内の湧水が滝となり地域の耕地を潤したことから村名(滝馬室)の由来になったといわれています。
滝馬室神社の社。的祭の始めに社の中で宮司による祈祷が行われます
祝詞の奏上。身も心も引き締まる思いです
一射めは天地に放つのがならわし
神事は午前11時から始まり、宮司によるお祓いが30分ほど行われたあと、いよいよ子供たちによる的射が始まりました。一射目は天地に放つのがならわしだそう。冬空に清々しく矢が放たれました。
的射前に弓矢もお祓い
滝馬室共楽連の方たちによる太皷の音色が神事を盛り上げます
初めて弓矢を引く子がほとんど。年番さんが丁寧に手ほどき。
矢がたくさん的に当たりました。いいことありそうです!
的祭は神事のためいくつかのしきたり(きまり)があります。過去に数度の火災による弓・箭(や)・直衣(儀式に着る衣装)の焼失などを乗り越え、また時勢によってゆるやかに変化を遂げながらも、旧事を尊重し脈々と今に引き継がれています。
出番を待つ12本の矢
やってみると意外と難しいです
弓は篠竹で、弓はエゴの木、玄は麻を撚って2張り用意します。エゴの木は雑木林などに自生する樹木ですが、年々採れなくなっているそう。
的は、葦(よし)を1.5メートルの網代に編み、その上に半紙を貼り、蛇の目をいっぱいに書きます。弓は2張り用意するため、射手の位置も2か所です。近年、弓は複数用意しているようです。
朝早くから準備に駆けつけた地元有志のみなさん
蛇の目をかたどった的を用意
水を撒いたり、掃き掃除をして会場を整えます
縁起の良い半纏(はんてん)に氷川神社の刺繍が光ります
当日は、年番さんはじめ地元の有志の方たちが焚火で暖をとりながら朝早くから準備を進めていました。地域の伝統行事ということで、テレビ局や新聞社など報道関係者の姿もちらほら見かけ、格式ある神事の名残りを垣間見る思いでした。地域の将来を担う十二歳の子供たちに思いを託しながら、地域で粛々と受け継がれてきた的祭。露店などの出店はなく、地元の方々や市関係者・的射を行う子供たち・その父兄の方々などが集まり、見物の人は少なめ。豊作と一年の無事を願い神様へ祈りを捧げる静かなお祭りですが、正月が明けたばかりの神社はとても清々しい空気に包まれていました。実は編集部も、福のおこぼれ?を授かろうと!?子供たちのあとに弓を引かせていただきました。風を切った矢は幸運にも的に!(実際は右端のほうで辛うじて的の中、という感じでしたが苦笑)。いいことありそうです!
滝馬室氷川神社(たきまむろひかわじんじゃ)
所在地 埼玉県鴻巣市滝馬室1150-2
アクセス JR鴻巣駅より徒歩20分
駐車場 なし
御祭神 素戔嗚尊
御神徳 災難除け・安全・家内安全