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玩具の製作技術では全国初! 重要無形民俗文化財に認定された鴻巣の赤物
子どもの成長を願い、魔除けのお守りとして親しまれてきた赤物
赤物とは、桐のおがくずと正麩糊(しょうふのり/デンプンから作った糊)を捏ねた粘土に顔料と膠(ニカワ)を混ぜた塗料で着色して作った、獅子頭、招き猫、鯛車、干支などの縁起物の飾りの総称。
縁起が良いと言われる赤を用いる場合が多いため、「赤物」と呼ばれています。
赤物は、古くから無病息災を願って子供に与えたり、魔除けのお守りとして親しまれてきました。
中でも「鴻巣の赤物」は、玩具の製造技術としては初めて国の重要無形民俗文化財に指定(平成23年3月)された、歴史的価値のある郷土工芸品です。
鴻巣の赤物は、デンプンでできた「正麩糊」と桐のおがくずを混ぜた生地、「桐塑(とうそ)」で作る「練り」という伝統的な製法です。
「練り」製法は、冬になると生地が凍ってしまうのが難点です。
そのため赤物作りは、5月に生地抜きをして冬になる前の11月までに完成できるように間に合わせるという、長期戦かつ時間との戦いになります。
そういった事情もあり昨今の赤物は、型に紙を吹き付ける「張り子」という比較的作りやすい製法のものが一般的に多くなっています。
現在は、手間暇と職人技が必要になる伝統的な「練り」製法で作られる赤物はごく限られており、大変貴重なものとなっています。
ここからはその「練り」製法について、写真や動画でご紹介していきます。
まず、桐のおがくずと正麩糊を練り混ぜて生地を作ります。
次に、「タネ」と呼ばれる木で作った原型を元にして松脂などを材料に作った「釜型(かまがた)」に嵌め、型抜きをします。
このように生地を練って作るので「練り」と言います。この製法で作られた赤物は大変丈夫で軽く、持ち運びやすいため、江戸時代の頃に中山道を販路に普及していきました。
昔はひな人形の頭部も主に同じ「練り」で作られていて、「練頭(ねりがしら)」や「桐塑頭(とうそがしら)」と呼ばれていたそうです。
夏の間に天日干しを行い、生地が乾いたら型からはみ出た部分の「バリ取り」をします。
赤物の生地抜きに使われる「釜型」。これは獅子頭の釜型です
「釜型」は木製の原型「タネ」を元に、松脂で加工して作られます
これが原型となる「タネ」
獅子頭の形と同じですね
重ねるとピッタリと嵌まります
釜型で生地抜き後、天日で干している最中のもの
「練り」製法は手間暇がかかりますが、その分とてもしっかりした頑丈な出来になります
フォルムが柔らかく可愛らしいのも「練り」製法ならでは
生地は最初のうちは柔らかいですが、完全に乾くと頑丈になります
これは鯉に載った金太郎「鯉金」の着色前の状態
夏の間に時間をかけて乾燥させた生地に、いよいよ「塗り」を施していきます。
「塗り」は、貝殻の粉末で作られた「胡粉」を2回下塗りした後、顔料と膠(ニカワ)を混ぜて作った塗料で色を入れます。
今回お伺いした11月中旬時点では着色作業中で、赤や金に塗られた招き猫や獅子頭たちがズラリと並べられ、乾燥を待っていました。
目にも鮮やかな赤物が並べられている様は壮観です
赤く塗られた獅子頭
招き猫は木に登っているようにも見えますね
顔や体の模様を描く「面相描き」をします。
部位によって、それぞれ専任の職人が分担して描いています。
赤物は「素朴だから受け入れられる」とのことで、華美な装飾よりも味のある素朴な筆運びのものが喜ばれているそうです。
面相描きをされている最中のだるま。一つひとつ手描きで命が吹き込まれます
面相描きは顔や体などの部位により分担して行います
赤物作りには熟練の職人ならではの技術が要ります
面相描きした部分の乾燥が終われば完成です。
鮮やかさで魔を払ってくれそうな赤物ができました!
伝統的な赤物の制作作業風景ををご覧ください。
赤物には多様な種類があり、定番の獅子頭以外には招き猫、干支などが人気があるそうです。
その一部を写真でご紹介します。
定番の獅子頭。特大サイズと番外サイズはケース入りなので
フォーマルな祝いの場に適しています
干支の赤物。どれも素朴な顔立ちで、見つめているとジワジワと引き込まれる魅力があります
子・丑・寅の三体。インテリアとして良さそうです
戌と亥。あどけない眼差しについ撫でたくなります
金太郎は熊・鯉・米俵・桃・羊…と様々なものの上に乗っているバリエーションがあります
金太郎不在で熊と鯉が抱き合っているものも…
上に乗られる苦労を分かち合っているのでしょうか
鴻巣の赤物を作っている制作工房に伺い、インタビューを行いました。
赤物「鯛車」
一鴻巣の赤物の魅力とは?
「一般的な赤物は、紙を吹き付ける『張り子』という量産しやすい作り方のものが多いですが、鴻巣の赤物制作技術は軽くて丈夫な『練り』を使っています。この作り方で生まれる『素朴さ』に魅力を感じて、鴻巣の赤物を見に来られるお客さんもいます。
面相描きについても、最近よく売られている赤物は顔や装飾が印刷なのでみんな同じ顔になってしまっていますが、鴻巣の赤物は一つひとつ筆で職人が手描きしています。
だからこそ生まれる、世界に一つしかない表情が魅力です」
─鴻巣の赤物を作る上での苦労やこだわりは?
「昔は鴻巣の人形町にも『練り』に使う生地を扱っている店が30件ありましたが、今はみんななくなってしまったので、生地から自分たちですべて作っています。
『練り』や『面相描き』で作る鴻巣の赤物は職人の高い技術と手間暇が必要です。「職人になりたい」と訪ねてくる方もいますが、職人になれるのは一握りというくらい、習得が難しい技術です。
ですが、誤魔化しをせずに一つひとつ手で作っているものだから、喜んでくれるお客さんがいて、今も伝統文化として残っています」